土木/ICT

二次元の図面を三次元で表現することで、現場作業を支援

長谷川 貴哉の写真

土木/ICT

二次元の図面を三次元で表現することで、現場作業を支援

建設現場の生産性向上のため、構造物の3Dモデルを活用する取り組みをBIM/CIMと呼ぶ。調査・設計段階で3Dモデルを作成し、施工・維持管理といった各工程で連携させることで、プロセス全体の効率化や情報共有を図るものだ。長谷川が所属するICT推進室は、BIM/CIMの活用による現場支援に取り組んでいる。「現場では、紙に書かれた二次元の図面から、三次元の構造物をイメージすることが求められます。3Dモデルの作成は、その作業を効率化するものです。ICT推進室では、3Dモデリングソフトの調査や、現場への展開を通じて、一連の作業支援を行っています。また、現場からの依頼を受け、3Dモデルを作成することも行っています」

INTERVIEW

長谷川 貴哉の写真

長谷川 貴哉

TAKAYA HASEGAWA

工学系研究科 修了
2015年入社

※内容は取材当時のものです

仲間と達成した地図に残る仕事

最新技術と現場の「橋渡し」となる存在に

ICT推進室に異動する前、長谷川は横浜でシールドトンネルの工事に携わっていた。用途は鉄道トンネルであり、直径10メートルを越えるシールドマシンが地下深く掘り進める工事。3交代制で24時間稼働する現場で、長谷川は職人をまとめる工事係を務めることになった。

「3交代制なので、前のターンの担当から状況を正確に引き継いで工事を進めなければなりません。とはいえ、シールドマシンにトラブルが生じたり、掘り進めるうちに、以前掘っていた地質と異なる地質が出てきたりなど、その場で臨機応変な判断が必要な場面が多くありました」

トラブルで遅れが発生すれば、どこかのタイミングでそれを取り戻さなければならない。「ゆっくり慎重に進めたい」という工事の方針と、「できるだけ早く掘り進めたい」という職人の意向が食い違い、調整に駆け回ることもあった。最初は右も左も分からなかった長谷川は、上司や先輩、ベテランの職人たちからの助けを受け、徐々に成長していく。ときには仕事終わりに飲みに出かけることもあった。

「仕事ではいつも真面目で優秀な方々が、オフの時間では笑顔で盛り上がっている。その姿を見ると、『このチームで一緒に仕事ができて良かった』と思えました。立場や経験、技術がまったく異なる方々と腹を割って交流できてこそ、チームとして大きなことを成し遂げられるのだと思います」

そうした成長の過程で感じるようになっていったのが、工事における省力化、デジタル化の必要性である。トラブルが発生した際、現場で紙の図面を広げ確認するという作業を、何度も繰り返していた。「ICTの技術を駆使できれば、その現場作業の負担を軽減し、生産性の向上につながる」。長谷川は職人たちと密にコミュニケーションを取る中で、そう確信していた。工事は順調に進み、シールドマシンがゴールに達する瞬間にも立ち会った。苦楽を共にした職人たちとその喜びを噛み締める一方で、長谷川の目線は、すでにICTの未来に向いていた。

そして現在はICT推進室で、3Dモデルを活用した現場支援に取り組んでいる。現場から寄せられる課題は、長谷川自身がトンネル工事で感じていたものでもあった。

「当時は、紙の図面を現場にたくさん持ち込むしかなく、汚れたり、雨に濡れたりするなどして、大変な思いをしました。3Dデータをクラウドで共有すれば、現場でタブレットから確認することも難しくありません。現場には『紙の図面のほうが慣れている』という方がいることも知っているので、現場の都合も踏まえながら、最新技術とのギャップを埋めることが自分の仕事だと思っています」

「いつか自分が現場に戻ったときに、BIM/CIMの知識を活用したい」と長谷川は話す。最新技術が働き方を大きく変える可能性を信じて、長谷川の挑戦は続く。

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仕事について

  • 仕事のやりがいは何ですか?

    関わった現場が竣工し、実際に使用されているのを見たときは感慨深いものがあります。土木構造物は、一人では絶対につくれない規模のものを、多くの技術者が集まって完成させます。それに自分が関われたことや、高い技術を持った方々と働けたことを誇りに思います。また、現在のICT推進室では、建設に関する最新のICT技術を勉強できる点で面白さを感じます。さまざまな現場におけるICT活用を検討するため、土木工事全般に広く関われることがやりがいにつながっています。

  • 入社理由は何ですか?

    大学では海岸工学を専攻しており、堤防の形状や津波の解析など海洋土木に近い研究を行っていたため、就職活動中も建設に携わりたいと思っていました。当時は東日本大震災からの復興がたびたびニュースになっており、土木が復興に大きな役割を果たしていたことも理由のひとつです。大成建設に決めた一番の理由は、リクルーターが熱心に話をしてくれたこと。こちらの質問にも細かく答えてもらい、ここまでの熱意を持てる会社ならと入社を決意しました。入社後も、社員同士のつながりの深さ、仲の良さに、あの「熱意」を感じることがあります。

  • あなたにとって「地図に残る仕事。」とは?

    就職活動では、土木に関わりたい思いがひとつの軸になっていましたが、もうひとつ「自分の子どもに作ったものを自慢できる仕事」という軸からも業界を決めていました。自分が携わった証が目に見える形で残り、次の世代に引き継がれる。そうした意味で「地図に残る仕事。」は、まさに自分が携わりたかった仕事だと思っています。

  • 今後の目標を教えてください

    ICT推進室では、現場からの依頼を受けて3Dモデルの作成を行っていますが、将来的には現場の人が自ら3Dモデリングソフトを扱えるようになるのが理想です。特に経験の浅い若手社員は、二次元の図面から構造をイメージすることが難しいため、3Dモデルを教育する機会を設けることで、業務を効率化できればと考えています。また私自身も、いずれ現場に配属された際には、ICT推進室で得た知見を元に業務をトランスフォームしていければと思います。

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