国立競技場建設プロジェクト

あらゆる分野のプロ視点からプロジェクトを支える

#04事務

不二門 竜也

TATSUYA FUJIKADO

情報文化学部 社会システム情報学科 卒/2001年入社

三重県出身。細身の体格であるが、小学校から大学まで柔道を続けており、大学時代は副主将として活躍した。10年以上住んだ東京を離れ、札幌支店へ配属になり、道内スポットを巡るなどの休日を過ごしている。

※内容は取材当時のものです

不二門 竜也の画像

不二門 竜也

TATSUYA FUJIKADO

情報文化学部 社会システム情報学科 卒/2001年入社

三重県出身。細身の体格であるが、小学校から大学まで柔道を続けており、大学時代は副主将として活躍した。10年以上住んだ東京を離れ、札幌支店へ配属になり、道内スポットを巡るなどの休日を過ごしている。

※内容は取材当時のものです

PHASE01

一つの支店に匹敵する規模

作業所における経理・会計、法務、総務、人事など幅広い業務を担当しリスクマネジメントを行うのが作業所事務の仕事である。社内のみならず、発注者、設計者、協力会社、近隣住民など、工事に関わる全ての人と幅広く連携する仕事であるため、工事の規模が大きくなればなるほど、関係者が増えていく。国立競技場建設における作業員数は延べ150万人にも上り、過去に例を見ないほどのビッグプロジェクト。そのなかで多岐にわたる業務をこなすのは容易ではない。作業所事務の中核を担った不二門も、あまりの規模の大きさに、呑まれそうになった。

「当然ですが、私にとっても経験したことがない超大型案件です。スタジアムの大きさもそうですが、工事に携わる関係者の数も、これまでとは比べ物になりません。事務担当者だけでも、一般的な作業所であれば数名ですが、本プロジェクトはピーク時には20名を超える人員が配置されました。さながら、支店が一つ作れてしまうほどのスケールでした」

本件は関係者の人数が多いため、多岐にわたる業務は細分化され、不二門は、発注者との契約や業績・コスト管理、人事などを主に担当することとなった。

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PHASE02

組織として、より高い成果を出す

限られた工期での国立競技場の建設。スケジューリングの難しさは、直接施工に携わることのない事務担当にとっても同じだった。工事をスムーズに進捗させるために、事務担当が率先して作業所内でのルールの取り決めや、作業所員同士の意見の調整を行わなければならないが、本プロジェクトほどの大所帯となれば、最終的な判断を行うまでのプロセスは複雑化し、多くの時間を要する。一方で、関係各所とのコーディネートに手間取ってしまうと、作業所全体の業務の遂行にも影響を及ぼしかねない。不二門は任せられた担当業務について、関係者と調整を重ねた。

「人数が増えると、組織内での意思疎通が難しくなります。細かいところで意見が合わなかったり、認識にズレが生じてしまったり。それぞれの考えをまとめ、合意形成を図るためにお互いの意見を調整することも事務担当に求められる役割の一つです。上手く調整がつかず、ある作業の工程が後ろ倒しになってしまうような場面もありました」

そこで不二門が重要視したのは、業務がスムーズに回るような仕組みを考えることだった。業務一つひとつに対してゴールまでのスケジュールなどをまとめたルールをつくり、関係者に対して周知を行うなど、業務に携わる全員がベクトルを合わせられるように働きかけていく。ときには工事社員と意見が合わず衝突することもあったが、工事が進むにつれ、組織として成熟していくのが手に取るように分かった。

また不二門にとっては、全ての業務について間違いのない正確なアウトプットを出すことも、重要なミッションの一つであった。業務をこなすことはもちろんのこと、本プロジェクトのような注目されるプロジェクトにおいては、社内外を問わず、アウトプットに不備があってはならない。プレッシャーを感じつつ、不二門が心がけたのは、どんな時でも集中力を切らさず正確性を期すことだった。

「本件は規模が大きいため、一つの仕事に対して膨大な量の作業が発生します。例えば請求書の確認ひとつをとっても、最盛期には1ヶ月で500件以上行わなければならないなど、その処理をこなすことだけに忙殺されてしまいがちになります。その中でも妥協を許さず、一つひとつをしっかり確認することで、精度の高い成果が出せるように努めました」

また、部下の一人ひとりにも強い意識を持ってもらうことで、高いレベルの業務が維持できる。プロジェクト成功の裏側には、事務担当総力をあげての不断の努力があった。

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PHASE03

苦労の先にある、仕事の価値

工期が差し迫るなか、不二門をはじめとする事務担当たちの尽力によって難局を乗り越え、予定通りに竣工を迎えた。それは不二門が、張り詰めた緊張から解き放たれた瞬間でもあった。

「達成感もありましたが、ホッとした気持ちの方が大きかったかもしれません。国家プロジェクトを担うプレッシャーのなかで日々業務を行っていましたので、当初予定通りの工期で終えることができ、まず安堵しました。このようなプロジェクトに携われる機会は、もう訪れないかもしれませんので、竣工時の国立競技場の姿は、しっかりと目に焼きつけておきました」

一生に一度、携われるかどうかのビッグプロジェクト。不二門は日々の苦悩のなかにも、確かな価値を見出している。

「大成建設を代表する工事でしたので、この組織の一員として業務を遂行できたことを、とても誇らしく思っています。また大組織であるがゆえに、様々な人の仕事の進め方、考え方に触れることができ、自分自身の成長にもつながったと実感しています。直接的に施工をする立場ではないものの、工事の舞台を裏で支えるのが、私たち作業所事務の仕事です。今後はそうした仕事の価値や、本プロジェクトで培った経験を、若い社員に伝えていければと考えています」

新たな希望を胸に、不二門はスタジアムを後にした。